オレ達の青春を逝く ―もう一度感じようオレ達の黒歴史― 【ネタバレあり】

    クロニクルという大仰な題がついてはいるが、時の流れを感じるという楽しみが出てくるほど大きな時間の流れを写し撮るわけでもなく、しかし時間軸を切り取って、ずらしたり、スローモーションや凝ったカメラワークをもちいるなど、作り手の過度な物語への介入を制限しているつくりが、僕らと何一つ変わらないバカで惨めなクソガキ共の青春と、僕らと何一つ変わらないアホで惨めなクソガキ共が意図せず手に入れた超能力によって、自らの心と体のパワーバランスと、周りの人たちとの力関係、さらには世界の治安とだんだんスケールを増して崩れていく様子を、場面ごとに1秒1秒克明に記録していくこの映像は、まさに青春の黒ニクルと言って相違ない内容である。誰にでも1つや2つはあるだろう、心に深々と刺さったまま記憶が砂のように積み重なって、普段は気にならないけどあるときキューンと痛むしこりになった所謂【黒歴史】というやつが。
 青春時代の私達には多くのエネルギーが満ちており、それをよい方向へ向けることも、悪い方向へ向けることも自由に選択できる、と言えば希望に満ちて聞こえますが、しかし、選択した自由に対して取る必要がある責任に対しては、いたいしっぺ返しを食らうまで、体験することなど不可能だという、当たり前のような事実を改めて認識させられると、彼らのような、僕らと何の変りもないようなクソガキが今回のような大惨事を引き起こしても、クソガキに世の中の善し悪しの判断なんかできやしないんだからしょうがないでしょうか!!と助けにならない船をだしたい衝動に駆られるが、事態は一向に改善しないのでもう何も言うまい。今回の大惨事は別に誰に責任があるという話ではないのだ。父親が朝から飲んだくれて息子にあたってばかりじゃなかったらとか、母が病気じゃなければとか、あの赤毛のF○CKIN B○CHはいったいなんだったのか?(童貞にあのハニートラップはきついですね。青春というのは童貞にはきつい世の中だ。)とか、そもそもあのアンドリューとかいうNegative Creepキモすぎとか、いろいろ考えてみたところで原因に行き当たるはずもないのである。なぜならばこれらはすべて『時代のせい』だからである。なにせ今はスーパーマンだって戦うことの意味を必死に探し求めているような世相なのだ。若くして人を超越する能力を得てしまったアンドリューが世を憂いて、世界すべてを敵に回すなどと、大きく出て判断を誤ってしまったとしても、誰がそれを責められよう。いやちょっと待てよ、一人その原因を創った奴がいるんじゃないか?バットマンこの野郎、お前も立派なフリークスの一員のくせして、端正なルックス1割、有り余る金9割を盾にヒーローごっこをおっぱじめるもんだから、他のフリークスたちも意固地になって、お前がフリークスを自認するまではって、みんながバットマンに寄って来るせいで、いつまでもゴッサムに平和が訪れないんだ。でもバットマンが悪いってことになるとやっぱりフリークス達が大暴れすることを企てたクリストファー・ノーランが最も罪深いよね、とか云々。
 それでもやっぱり世の中に点在するNegative Creepを自認するオレとしては、「アンドリュー、お前もつらかったよな。お前は先に逝っちまったけど、オレだってこの世に生を受けてしまったからには、死に向かって必死に這いずって行ってる最中だから。オレもそのうち逝くから。待っててくれ」っていうしかなかった楽しい2時間だったな。
 おまけ
 この物語の進行と並行して行われていたPOV限定「オレ達は恐怖の中でいつまで撮りつづけることができるのか選手権―カメラ片手のチキンレース―」は開始早々、そのフィルムの所在が皆に明示されないという不安の中、やはり、劇中登場するカメラ娘の視点を挟むなど、あわやこの選手権のルールに則ってないんじゃないかというギリギリのレース展開の中、父のDVにも負けず、未成年のS○Xシーンは、カメラを他人の手に渡すなど、年齢制限の上昇を周到に回避しつつ、終盤、カメラは主人公の手を離れ、超能力の力によって観客に一番見てほしい映像をフィルムに収めるという、超能力者ならではの大技を繰り出すものの、でもそもそもそれってPOVじゃない普通の映画と変わらないんじゃないかとの声もあがるが、いやそれでもあの戦いの中抜群のカメラワークで魅せた彼の手腕はなかなかのものだという声も無視できなかったため“やっぱりアンドリューくん、君は特別で賞”を僕は勝手に授与しようと思います。